元文 さくら 本醸造(日本酒・岐阜県)
布屋 原酒造場「郡上乃地酒 元文 さくら 本醸造」花酵母仕込み
720ml、1,050円(税込1,134円)
「荒島岳」の帰りしな、白鳥(しろとり)にある酒販店で購入。冷蔵室には様々な地酒。その中でひときわ目立つ「花酵母」の文字。桜をはじめ、菊、カトレア、月下美人と、4種類の花酵母で仕込んだ酒が並んでいる。花酵母自体目にする機会も多いが、実は試したことがなかった。
この店の店主によると、花酵母は今の代が大学時代に天然酵母の研究会に属しており、そのノウハウを酒造りに生かしているのだが、なにせ宣伝下手なのでなかなか世に広まっていかないようなことを言われていた。冷やだと感じないが、燗につけると花の香りが立つらしい。
桜と菊は香りも知っているが、カトレアと月下美人はかいだこともないので、とりあえず分かりやすい「さくら」を購入。
後で分かったのだが「さくら」は本醸造、「菊」は大吟醸・・・と種類も違ったようだ。
創業年にちなんで「元文」なのか。創業元文五年とは・・・1740年、徳川吉宗が暴れん坊となって江戸を収めていた時期。
常温(冷や)まで戻した酒をグラスを注ぎ、まずは上立ち香を確認。
桜、と言うよりも、新緑の清々しい香りに感じ取れる。しかし含むと、いきなり円やかな甘味が広がった。「花酵母」というイメージにとらわれているのかも知れないが、確かにフワ〜っと花弁の舞うがごとし、甘美な世界の中に引き込まれる。べっとりとせず、サラッと綺麗な甘味。面白いことに、甘味とのバランスを取る酸味の存在を感じられない。ワインで言えば「ロゼ」のような、お茶で言えば「甘茶」のような、そんな位置づけに感じ取れる。
燗を付けてみると、なるほど、感じられなかった香りが柔らかく立ってくる。
桜だけの香りではなく、様々な「花」のよう。桜そのものと思っていたので期待とは違ったがいい香りだ。
味わいも、やはり燗の方がふくらみが出てきて旨い。本醸造ならではの円味がある。これ、酒好きの女性に飲ませたら喜びそうだなぁ・・・などとイヤらしいことに想いを馳せながら晩酌を楽しんだ。
12代当主も「元文」さんとは・・・襲名制度なのだろうか
ラベルにもサイトにも記載されていないが、先の店主によると、米は地元のコシヒカリ、水は長良川の伏流水で醸しているという。
非常に軽やかな味わいだったが「元文」は地元郡上ではあまり売れず、名古屋や岐阜市街などの市街地に卸しており、特に「元文 布屋蔵出し」は人気の一品、ということらしい。
「花酵母」という個性的なイメージのある日本酒。にごりやどぶろくを飲み付けている地元の方には、少々受け入れがたいものがあるのだろうか。
フォトショで花弁を浮かせてみました・・・